博物館の戦争動員

イスラエルの博物館が国際博物館会議(ICOM)にハマスの暴力を非難するよう緊急アピールを発表

イスラエル博物館やテルアビブ美術館をはじめとする美術館の代表者もまた、国際博物館会議(ICOM)に対し、ハマスがいわゆる「イスラム国」に匹敵するテロ組織であると認定するよう求めている。

イスラエルの主要博物館の館長たちは、国際博物館会議(ICOM)に対し、ハマスがテロ組織であることを非難するよう要求している。

この要求は、10月22日に配布された強い文言の公開書簡で発表された。「我々はICOMに対し、(ハマスの)テロ行為を最大限の熱意をもって非難することを要求する」と館長たちは書簡の中で述べている。

この公開書簡は、ICOMのイスラエルを代表する国内委員会であるICOMイスラエルを通じて発表された。タイトルは「緊急:イスラエルの最近の出来事に対するICOMの強い姿勢のアピール」。

ICOMイスラエルのラズ・サミラ議長によって書かれたこの書簡の署名者には、エルサレムにあるイスラエル博物館のスザンヌ・ランドー館長、テルアビブにあるテルアビブ美術館のタニア・コーエン=ウズィエリ館長、ハイファ博物館のヨタム・ヤキル館長のほか、国内の主要な博物館の館長が名を連ねている。

書簡はICOMに対し、戦争に対して積極的かつ倫理的な立場をとるよう求めている。また、ICOMに対し、ハマスがいわゆる「イスラム国」に匹敵するテロ組織であることを認めるよう求めている。

「これはイスラエルとパレスチナの紛争における別のエピソードではありません。ハマスとイスラム聖戦は、タリバンやイスラム国に似た、残忍で非人道的な組織であることを自ら示している」。

書簡にはこうある。「ハマスによる無防備な市民の虐殺を非難し、人道主義と自由主義を支持する大胆な姿勢を表明するよう、ICOMコミュニティに心から要請する」。

10月7日のハマスによるイスラエル攻撃では、1,300人以上が死亡、3,500人が負傷し、約200人が人質となった。BBCニュースが引用したパレスチナ保健当局の数字によれば、ガザ地区への報復侵攻によって、推定4,300人のパレスチナ人が死亡したという。

攻撃以来、アメリカ、フランス、イギリス、ドイツを含む40カ国以上が、イスラエルの自衛権を支持する声明を発表した。これらの国々は「ハマスに対して断固として非難し、その戦略をテロリストと分類している」と書簡には書かれている。

「イスラエルに向けられた批判は承知しているが、イランの支援を受けたハマスによる恐ろしい攻撃には弁解の余地がないことを強調することは極めて重要であり、それを理由づけるいかなる努力にも激しく反対する。ハマスの活動は、無防備な市民に対する凶悪な殺人、レイプ、拷問、拘束にほかならない」。

英国や米国を含む各国の指導者も、外交と人道支援がガザに届くようにすることに力を注いでいる。英国のリシ・スナク首相は週末、エジプトのアブドゥル・ファタハ・アル・シシ大統領と会談し、エジプトとガザを結ぶラファ国境交差点の再開を促した。一方、ジョー・バイデン米大統領は土曜日に声明を発表し、次のように述べた。「米国は引き続き、ガザの市民が、ハマスによって転用されることなく、食料、水、医療、その他の援助を受けられるようにすることを約束する」。先週、バイデンはまた、イスラエルが9・11テロ後にアメリカが犯した「過ち」を避けることの重要性を警告した。

近年、ICOMはウクライナ戦争や、米国で起きたジョージ・フロイドの人種差別的殺人事件に関する声明を発表している。

ロシア軍がウクライナに侵攻した2022年2月24日、ICOMはウクライナの文化遺産の破壊と脅威を非難する公式声明を発表した。声明は 「ウクライナの領土保全と主権の侵害を強く非難する」。

2022年6月3日に発表されたジョージ・フロイド氏殺害事件を振り返る声明の中で、ICOMは次のように述べている。「博物館は中立ではない。博物館は、その社会的背景、権力の構造、地域社会の闘争から切り離されていない。そして、博物館が分離しているように見えるとき、それは誤った選択である」。

ICOMの広報担当者は、記事掲載時点ではコメントの要請に応じなかった。

https://www.theartnewspaper.com/2023/10/23/israeli-museums-publish-urgent-appeal-for-international-council-of-museums-icom-to-condemn-hamas-violence#:~:text=The%20directors%20of%20every%20major,which%20circulated%20on%2022%20October.


(コメント)この件でICOMがどのような対応をするか現時点で不明だが──予測はつく──、それにかかわらず2022年の2声明でだいたいの評価はできる。伊藤寿朗の「戦争は博物館の最大の敵」論と似た、ロシア敵論、誤選択敵論の、まるで博物館が前線にいるかのような勇ましさには「勝って来るぞと 勇ましく」(露営の歌)が想起される。博物館の戦争動員である。これらとは趣を異にする、戦時下の博物館論があった。『地域世界』7(2024年1月刊)に掲載予定の研究ノートで紹介する。

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